特別養護老人ホーム希望苑の第三者評価の結果
評価実施年月 | 平成23年7月〜平成24年3月 |
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公表年月 | 平成24年3月 |
対象サービス | 特別養護老人ホーム |
法人名 | 社会福祉法人公正会 |
対象事業所 | 特別養護老人ホーム希望苑 |
住所 | 〒245-0001 横浜市泉区池の谷3901-1 |
TEL・FAX | TEL:045-812-8181 FAX:045-813-0200 |
ホームページ | http://www2.ocn.ne.jp/~kibouen/ |
総合評価
優れている点・独自に工夫している点
- 利用者への接遇やサービス向上のために、様々な委員会を13、設置している。衛生委員会、研修委員会、サービス向上委員会、マニュアル委員会、実習委員会、衛生管理委員会などで、各委員会はそれぞれが密に連携し運営されている。
- 中核となるサービス向上委員会では、「セルフチェックシート」という独自の自己啓発シートを用いての自己評価を、常勤・パートを含めた全介護職員が毎月実施している。利用者に不適切と思われる対応があった場合、職員が互いのそのような対応を黙認するような積み重ねを生まない「土壌・風土」を作ることに力を入れている。不適切なケアが生まれるのはなぜか、その「経緯」を常にチェックすることを重視している。
- マニュアルについては、利用者に合わせた食形態などについての食事マニュアル、排泄介助について明記されている排泄介助のマニュアルなど、必要なマニュアルが整備されている。その内容を常に見直している。他のマニュアルに関しても各々担当者が決まっており、毎年内容を見直し、実際の介助やサービス提供の実態に合わせた更新が行われている。
- 職員研修に多くの時間を取り、職員の育成を通じて、サービスの向上に重点を置いた運営を心掛けている。また、キャリアパス規定に基づいて階層別研修も実施している。外部研修の参加に際しては、事前に管理職と本人とで"業務課題や期待する業務像をすり合わせ"、研修目的を確認して参加している。全職員が、自分達が介護を支えているのだという意識に立って、仕事ができるよう努めている。
- 「職場環境の改善」をテーマに、職員の負担が少なく利用者の不安感が軽減される「持ち上げない介護」の徹底を目指し、スライディングボードを使用した移乗介助を導入している。また、移乗マニュアルの変更を行い、負担の少ない介護方法について指導を繰り返しながら、スライディングボードの種類、数量を増やし実施に至っている。実践を通じて介護職員の意識改革を目指し、実践後の評価で課題を整理し、移乗しやすい車椅子やベッドの導入にもつなげている。
- 浴室を全面改修し、個別入浴(個浴)タイプの浴槽を導入し、これまでの複数の利用者が同時に入浴する状況を改善している。特浴、中間浴、一般浴とも、すべて個別入浴(個浴)を提供することで、利用者の好みの湯温でプライバシーを確保しながら、ゆったりと入浴を楽しむことができるようにしている。
- 食事は、利用者の個々の状態に合わせて、主食、副食とも、それぞれ食べやすい調理、粥、キザミ食、ミジン食、ソフト食、ゼリー食など複数の食形態を用意し、口から食べることを大切にして取り組んでいる。また、誤嚥を防止するため、ゼリー食などをスライス状にしてスプーンに盛って介助している。
- 栄養ケア計画は、栄養士を中心に毎月、会議を開催して策定している。一人の利用者に対して3ケ月に1度、内容を見直している。家族への説明もできるだけ直接説明して、同意を得るようにしている。
- 近隣の幼稚園や保育園とは、さつま芋の苗付けやさつま芋堀りを一緒に行って、交流を深めている。ボーイスカウトやボランティア団体との交流も活発に行い、利用者は、近所を散歩したり、馴染みの場所を訪れたりしている。
- 認知症の方など、意思表示が困難な利用者について、利用者の身体の動きや表情、仕草などのサインを見逃さないようにして声掛けし、排泄の介助など、タイムリーに適切な対応ができるようにしている。
- 施設理念に沿って「尊厳を持ってその人らしく」を重視し、看取り介護を実践している。利用者本人の意思を最優先するよう配慮しながら、平成21年度からは施設全体の取り組みとして実施し、看取りは家族と一緒に行っている。看取りの過程で、@家族も死を受け入れられるような変化があり、また、A職員も、看取り終えたという充足感・達成感など、様々な人間的な成長や介護意識の深化を得ていくことが見られている。逝去後は、数日以内に「振り返りのカンファレンス」を行い、また、2〜3ヶ月後に「偲びのカンファレンス」を実施し、職員間で看取り介護の振り返りを行っている。
評価領域ごとの特記事項
人権の尊重
- 利用者への接遇やサービス向上のために、各部署2名の委員からなるサービス向上委員会を設置し、サービス向上のための勉強会を毎月行い、利用者に適切な対応が行われるよう、接遇や人権研修に取り組んでいる。
- サービス向上委員会によるセルフチェックシートで職員が振り返りを行い、自己啓発を促進する仕組みがある。また、チェック内容を集計して課題を抽出し、職員の意識の向上に取り組んでいる。
- 利用者一人ひとりが「尊厳をもってその人らしく自立した生活を送れるよう支える事」という理念を、2階及び3階寮母室内など数箇所に掲示し、職員全体会議においても取り上げ、職員間で意識統一を図っている。また、虐待についての冊子の執筆やDVD作成において、苑内の取り組み内容をモデルとして外部に提供するなどの協力をしており、施設全体で高い意識を持って取り組んでいる。
- 外部の訪問・見学者については、事前に利用者に伝達している。実習生には、実習前に「個人情報保護」に関する誓約書の記入と共に、写真付きプロフィールと自己PRを書いてもらい、フロアーに掲示し利用者に紹介している。
意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供
- ケアプラン作成指針に基づき、職員が共通認識を持ってサービスを提供している。朝夕の各フロアーミーティングで計画の内容を周知し、利用者が自身の思いや希望を実現できるよう支援している。特に、利用者自身の特技を披露する場面を設定したり、利用者個々の希望により、外食利用や買い物をするほか、傾聴、ピアノ演奏などのボランティアの活動も積極的に受け入れている。
- 個別支援計画は、担当者が必要に応じてサービス担当者会議を招集して話し合いを行い、計画の見直しや変更を行っている。また、毎月1回施設ケアマネジャーがモニタリングのため面接を行い、利用者のニーズなどを受け止めている。カンファレンスの開催では、家族が出席できるよう日程調整を行い、直接、希望や要望を汲み取ることができるようにしている。
- 職員1名が2〜4名の利用者を担当している。ADL支援内容については、担当職員が毎月更新をおこないADL表に記載し、買い物や病院通院など社会適応能力についても計画を立てている。また、カンファレンスの際には利用者本人や家族の希望を直接聴き、施設サービス計画書に反映させている。
サービスマネジメントシステムの確立
- 掲示中の苦情受付ポスターに、苦情受付担当者、苦情解決責任者が明記してある。苦情解決調整委員会が設置され、外部委員3名が第三者委員として機能している。各フロアーに御意見箱を設置し、利用者にも活用されている。
- セーフティー委員会では、危険度を抜粋して事故を未然に防ぎ、事故発生の場合は報告と再発防止を徹底し、着実な実行を重点に取り組んでいる。業務中のヒヤリハットはメモの記入を重視し、目に付く場所に貼るなど職員間で共有している。メモの内容は集計し、リスクが高い利用者への支援方法を見直し、事故の防止に努めている。
- 食事や入浴などの支援マニュアルは、各フロアーの寮母室にいつでも取り出せるように置かれている。また、フロアー毎に毎週開催される勉強会で読み合わせを行い、周知を図っている。マニュアル委員会による指摘や調整の下、食事など内容毎のマニュアル担当者は年1回年度末に、あるいは随時更新している。
- 各フロアーの寮母室に感染症マニュアルを置き、年2回全体会議にて研修を行っている。また、勉強会で周知を図っている。感染症の予防は、感染症マニュアルに沿い、特に個室対応が必要な利用者に対しては、こまやかな訪室や音楽等で淋しさや不安感を取り除くよう配慮している。
- 緊急時対応マニュアルには、防火、 防災時の対応が記載されている。各部署へは、災害時対応マニュアルとして災害発生からの流れや動きを記してあるものを配布している。施設として、泉区の社会福祉施設等防災連絡協議会に設立時から参加し、行政・消防・福祉施設が連携して、防災対策に取り組んでいる。
地域との交流・連携
- ボランティア活動では、傾聴、ピアノ演奏など多くのグループを受け入れている。活動が一日の場合などは昼食を提供し、一定期間活動されている方を対象に、毎年「感謝の集い」として交流・意見交換の場を作っている。
- 行政・消防・福祉施設が連携して、防災対策を強化している。区の社会福祉施設等防災連絡協議会には設立時から参加している。また、「希望苑、新中川病院、横浜善部団地自治会の災害時における消防応援について」として三者協定を結んでいる。消防の応援協力の中で、災害時の地域分備蓄品31人分を3日分備えるなど、地域の拠点施設として機能している。
- 職場体験として中学校3校及び教職員研修を受け入れている。保育園や幼稚園の園児を対象に、苑内の畑を芋掘りに開放している(施設への関心のきっかけ作り)。泉区介護フェスティバルに企画から参加し、区内の方に介護相談、施設見学会、介護体験談などを実施している。夏祭りには、近隣に参加を呼び掛け交流している。小学校などの車椅子体験学習に、講師として職員を派遣している。
- 自治会向けのミニ広報を今年度より作成し、近隣6つの自治会に出向き、回覧や掲示板への依頼をして、情報交換を行なっている。また、区の「生活相談員研究会」に、希望苑の夏祭りを掲載し、地域住民の参加を呼びかけている。
運営上の透明性の確保と継続性
- 施設理念は、年度初めの全体会議で周知している。また、職員が施設理念を意識して業務を遂行できるよう、玄関・各フロアー寮母室内に掲示している。
- 職員研修に時間を取り、職員の育成を通じ、サービス向上に重点を置いた運営を心掛けている。毎年、管理職数名と職員本人とで、「なりたい自分」、「自分に応じたキャリア」、「期待する本人像」などについて面接を実施し、業務目標を確認するようにしている。外部研修に参加する前には、研修目的を本人と確認した上で、外部研修に送り出している。
- 外部研修の研修報告書は、2階、3階の各フロアーに回覧し、内容を全体で共有すると共に、廊下にも掲示し、家族が閲覧できるよう工夫している。
- 全介護職員(常勤・パート含む)は、セルフチェックシートを用いての自己評価を毎月実施している。介護職員が自身の業務の振り返りを行なうと同時に、サービス向上委員会で全介護職員から出された自己評価内容を集計・検討し、サービス向上などに役立てている。今回の第三者評価の受審結果は、広報誌などを通じて、家族や地域に公開していく予定である。
職員の資質向上の促進
- 施設理念を職員が常に意識できるよう、各フロアーに掲示している。また全体会議や勉強会、苑内研修などにおいて、理念に基づいた介護について勉強する場を持ち、共通理解のための工夫を行っている。
- キャリアパス規定に基づいて、階層別研修を実施している。多くの研修予算をあて、外部研修にも多くの職員が、キャリアに合わせて参加している。研修参加に際しては、事前に管理職と本人とで業務課題や期待する業務像をすり合わせ、研修目的を確認し参加している。全職員が、自分達が介護を支えているのだという意識に立って仕事ができるように努めている。
- 内部研修は、サービス向上委員会で研修テーマを設定し、場合によって外部講師を依頼し実施している。外部研修については、参加した後に提出される研修報告を各フロアー毎に職員間で回覧し、研修内容を職員全体で共有している。重要と思われる研修については全体会議で取り上げ、外部研修に参加した職員が講師になって報告している。
- 2階、3階の各フロアー及びデイサービス、調理の委員からなる実習委員会が、施設の重要業務と捉え、実習生の受入れを担当している。各フロアーに実習生についての情報を伝えるとともに、日々の振り返りや目標達成への進み具合など、相談しやすく意義ある実習が出来るようサポートしている。
評価結果詳細
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