愛育寮の結果
評価実施年月 | 平成24年7月〜平成25年3月 |
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公表年月 | 平成25年 3月 |
対象サービス | 障害者支援施設 (施設入所支援 生活介護) |
法人名 | 社会福祉法人すぎな会 |
対象事業所 | 愛育寮 |
住所 | 〒243-0125 神奈川県厚木市小野2136番地 |
TEL・FAX | TEL:046-247-0311 FAX:046-248-8608 |
ホームページ | http://www.sugina.or.jp/ |
総合評価
優れている点・独自に取り組んでいる点
- 施設を訪問し先ず感じることは、利用者も職員もともに表情が明るく、のびのびとしていることである。施設のパンフレットの冒頭に、利用者一人ひとりの能力と特性を尊重し、安全で、快適で、なごやかに生活できるように精一杯支援すると謳い、それを実践していることが伺える。今回の第三者評価の利用者アンケートでも、93%の利用者が職員と気軽に話ができ、親交がもてると回答しており、利用者と職員の関係づくりの成果が伺える。
- 法人の理念に、「人間としての尊厳を重んじる姿勢を貫きます」と明記し、人権侵害防止規程を定めて、利用者への虐待や拘束に繋がる言動や行為を強く戒めている。年1回、人権委員会が中心となり、人権チェックリストによる全職員の自己評価を実施している。チェックリストには、個人の尊厳の尊重、人権侵害、利用者への接し方などについて50項目の設問があり、自己評価の結果を人権委員会が取りまとめ、結果について職員同士で話しあい人権擁護についての注意を喚起している。
- 個別支援計画作成資料を整備し、アセスメントシートや個別支援計画書記述の品質向上と標準化を図っている。アセスメントシートは日常生活動作、生活技術及び健康管理、社会技術及び社会参加、意思伝達及び対人関係等7つに分類し、それぞれ10項目程度の評価項目を設定し項目ごとに5段階評価の援助レベルを明確にし、利用者ニーズを詳細に記述している。個別支援計画書は、生活面・健康面、日中活動・余暇活動、栄養面のそれぞれの支援課題を設定し支援の方法と期間を定めている。利用者本人の希望を明記し、エンパワーメントの視点を重視した計画づくりを心がけている。
- 日中活動は農業グループ(20名)、創作グループ(27名)、及び寮に残っての利用者ごとの活動(12名)に分かれて実施している。農業グループは有機栽培の野菜作りを主体にし、収穫した野菜を販売している。創作活動は絵画や紙粘土を素材にした作品づくり、牛乳パックを利用しての紙すきとそれを使ったカレンダーや葉書などを制作している。施設内各所に利用者の作品が展示されている。自閉性の障害で集団活動が苦手な利用者は、ボールペンの組み立てや封筒入れ作りなどの作業を行っている。職員は、個別支援計画に沿って利用者の希望と障害特性に配慮した日中活動を支援している。
- 利用者のほとんど全員が毎日入浴を楽しんでいる。夕食前の入浴が多いが、入浴は21時まで可能である。入浴介助が必要な利用者は全体の25%程度で、入浴介助一覧表を作成し、発作や転倒予防など利用者ごとの入浴時のリスクを明記し、個別支援計画の課題に沿って職員が介助している。
- パソコンを活用し、職員間の情報共有の仕組が整備されている。アセスメントシートや個別支援計画書、及びケース記録をパソコンに登録している。また、健康診断やバイタルサインのデータ、診断や薬の変更など医師の指示情報を医療記録として看護師がパソコンに入力している。職員は出勤時に必ずパソコンのデータを確認し、ケース記録や医療情報、及び個別支援計画に目を通して利用者支援に努めている。
- 年6回、火災と大地震を想定した避難誘導訓練を実施している。訓練は初期消火、避難、火災・警戒宣言の通報、自営消防隊の総合活動訓練と目標を設定し日を分けて実施している。火災場所を数か所想定し異なる避難経路を確認している。避難訓練時の昼食は非常食を食べている。そのため乾パンをレトルトご飯に変更するなどの見直しにつながっている。大地震発生及び東海地震警戒宣言発令時の対応マニュアルを作成し、勤務状況や夜間を想定した職員の行動を指示し、勤務外職員も含め全職員は緊急出勤の義務を負うことを明記している。
改善を要する点
- 現在、利用者主体の自治会活動は行われていない。個別支援計画策定時のアセスメントやご意見箱の設置等により利用者ニーズの把握に努めているが、利用者同士の当事者活動の中から施設運営へのニーズがでてくることが望まれる。自治会の立ち上げを側面から支援し、当事者活動の活発化を図ることで、利用者の自己実現に向けての支援の一層の強化に繋がることを期待したい。
評価領域ごとの特記事項
人権の尊重
- 人権委員会を立ち上げ、年1回人権委員会が中心となり、法人全体で「人権チェックリスト」を用いて自己点検を実施している。チェックリストには、個人の尊厳の尊重、人権侵害、利用者の接し方などについて50問の設問があり、個人でチェックするのみでなく職員間で話し合い、人権擁護の意識を共有している。
- 身体拘束等行動制限に関する取り扱い要綱が作成されており、行動制限の内容を明記し、行動制限をしない取り組みについて説明している。また、やむを得ず実施する場合の事由や対応について明示している。
- 入職時に法人の運営規程集が配付されている。その中には、人権侵害防止規程、職員倫理綱領、職員行動規範、法人の行動指針などがあり、利用者に対して行ってはいけない言動等について明記している。法人主催の虐待防止に関する研修を行い、支援会議や職員会議でも折に触れて虐待防止に関する話をして、職員間の意識の共有を図っている。
- 法人の個人情報保護規程が作成されている。個人情報の利用目的を明記し個人情報の取り扱いについて明示している。職員倫理綱領や行動規範には守秘義務について記されており、支援会議や職員会議の場において全職員に周知している。利用者の前で他の利用者個人に関わる話をしないように配慮している。
利用者の意思・可能性を尊重した自立生活支援
- 個別支援計画書を年度初めに作成し、10月と2月にモニタリングを行い、見直しを行っている。モニタリングを実施し利用者の状態に変化が見られた時には、検討会議で、職員間で話し合い計画を変更している。入院して退院したときや体調に変化が生じた時には、随時計画の見直しを行っている。
- 個別支援計画書作成にあたり、利用者一人ひとりの障害特性から予測されるリスクについて把握し、課題を設定して個別支援計画に反映している。難聴の人には後ろから来る車に注意すること、暴力的な行動をする人には本人の話をよく聴くことなどを支援計画に明記している。毎日の様子をパソコンのケース記録に記載している。ケース担当支援員は利用者のADLなどの情報をパソコンのケース記録で確認し、個別支援計画書に反映させている。
- 出来るだけ利用者の持っている力を発揮できるよう、個別支援計画書の作成に、エンパワーメントの要素を取り入れている。例えば、健康な生活がしたいという希望に対して、農業体験や歩くこと(図書館まで歩く、買い物には歩いていくなど)を取り入れ、自身の力で目標を達成することが出来るよう支援している。
サービスマネジメントシステムの確立
- 法人の苦情解決規程があり、苦情受付担当者、苦情解決責任者及び第三者委員の設置を明記し、また、苦情解決の手順などについて明示している。苦情解決責任者と苦情受付担当者を選任し、掲示して利用者や家族に周知している。苦情内容や対応の状況を苦情解決記録用紙に記載し、支援会議で解決策について話し合い申し出た人に説明している。
- 11月から2月を施設内感染症予防強化月間と定め、施設全体で感染症の予防に取り組んでいる。救命救急については、マニュアルに基づき緊急対応ができるよう取り組んでいる。また、AEDを各フロアーに設置し、吸引ノズル器も食堂及び各フロアーの支援室に設置し緊急時に備えている。AEDを含む救命救急講習を毎年定期的に実施し職員がいつでも対応できるようにしている。
- 「防災マニュアル」に基づき、火災や災害時に対応できるよう体制を整え、職員に周知している。防災倉庫には、100人×3日分の食糧などを備蓄しているが、今後は5日分に増やすことを検討している。今回の地震から、災害時の障害者の受入れ対策についても、内容の見直しを市に働きかけている。
地域との交流・連携
- 自治会に加入し、地域の美化清掃や防災訓練に参加している。法人内ホールを開放し、地域住民や自治会関係の会議の開催に利用している。すぎな祭・納涼祭などの施設行事開催時には、地域の方々を積極的に招いて情報交流を図っている。
- すぎな会が開催する研修会などへの参加も施設を理解してもらう取り組みと位置付けて、自治会、地域施設、事業所などに声をかけ参加を呼び掛けている。また、地域内の他施設の職員の研修受け入れを行っている。
- 作品を展示、販売することで、学園の紹介を行い、地域の方に障害者の福祉施設を理解してもらう取り組みを行っている。
- 実習担当職員を置き、専門学校や短大生、大学生の実習の受け入れを行っている。実習生は、実習1ヶ月前にオリエンテーションを受け、事前学習として施設の概要などを理解して実習に臨んでいる。
運営上の透明性の確保と継続性
- 「人間としての尊厳を重んじる姿勢を貫きます。」「利用者それぞれのライフステージにおけるケアをめざします。」「地域と協調し地域の一員としての役割を果たすよう努めます。」「経営体としての安定性・積極性・信頼性を追求します。」の4項目を法人の経営理念に掲げている。入職半年後を目安に職員倫理綱領および職員行動規範を中心とした振り返り研修を実施し、経営理念、法人行動指針などを職員に周知している。
- 施設運営方針に支援の質の向上を明記し、利用者の生活の質の向上に取り組んでいる。職員全員に「人権チェックリスト」での自己評価を実施している。支援体制をより安定させるために、自らの支援の仕方をチェックリストで確認し、業務を振り返る機会としている。
- 日常の業務において不法行為が起きないよう、利用者の問題行動やその対処法について、上司に相談したり職員同士が相談し合える体制が出来ている。ケース検討会で身体拘束や虐待について話し合うことも多く、職員間で注意を喚起している。他の施設で不法行為が生じた時にはその内容を事例として掲示するほか、申し送り等で話し合い、不法行為の防止を心がけている。
職員の資質向上の促進
- 法人全体で新任支援員への内部研修を行ない、入職半年後を目安に職員倫理綱領および職員行動規範を中心に研修を実施し、施設をあげて新任支援員の育成に当たっている。また、新任内部研修において経営理念、法人行動指針などを周知している。外部研修はテーマに応じて参加者を決定している。研修報告は、随時公表してプロジェクト会議や支援会議の場で職員に報告し、研修成果を共有している。研修報告書はファイリングして自由に閲覧することができる。
- 研修規程を作成し、職員の階層別研修の実施を規定している。また、研修委員会を設置し、研修実施計画を策定し実施することを明記している。階層別研修の一環として、主任課長研修(全国経営協 平成23年7月)、スーパーバイザー研修(主催県社協 平成23年8月)等の研修を受講し、研修報告書が提出されている。
評価結果詳細
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