神奈川県社会福祉士について

金沢若草園の第三者評価の結果

評価実施年月 平成26年7月〜平成27年3月
公表年月 平成27年 3月
対象サービス 障害福祉サービス事業所
(生活介護、就労移行、就労継続A型、就労継続B型、短期入所)
法人名 社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会
対象事業所 社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会 金沢若草園
所在地 〒236-0023 横浜市金沢区平潟町12-2
ホームページ http://www.kanagawa-id.org/wakakusaen/

総合評価
(優れている点、独自に取り組んでいる点、改善すべき事項等)

<施設の概要>

 障害福祉サービス事業所金沢若草園は、京急線金沢八景駅からシーサイドラインに乗換え一つ目の駅野島公園駅から徒歩6分の閑静な住宅街にある。秋篠宮殿下を総裁に戴き、日本全国に300を超える医療機関や福祉施設を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会が、昭和40年5月に開設した知的障害者通所施設である。生活介護事業所(定員12名)、就労移行支援事業所(定員6名)、就労継続支援A型事業所(定員10名)、就労継続支援B型事業所(定員32名)及び短期入所事業(定員6名)を運営している。平成26年11月1日現在、19歳から65歳までの69名が利用し、平均年齢は36.9歳である。
 金沢若草園の基本理念に、「みんな仲良く、明るく、楽しく」「寄り添う支援を目指して」を掲げて、人権尊重に基づく利用者主体の施設運営を目指している。また、金沢若草園倫理綱領に、職員は倫理観を共有し利用者一人ひとりの自己実現と社会参加に貢献していくことを明記している。

<優れている点>

  • 利用者自治会活動を支援し、利用者の自立と自己決定の意識の強化に努めている。
     利用者自身の意思や要望の自己決定を支援する目的で利用者の自治会活動を支援している。利用者の選挙で自治会長を選び、自治会(若草会)を中心に施設運営や余暇活動、年6回の宿泊旅行の行き先等について話し合っている。自治会は毎月1回開催しほぼ全員の利用者が参加している。自治会を通して利用者は苦情解決の仕組みや工賃支給の仕組み等を自分の身近な問題としてとらえるようになっている。利用者間のいじわるや金銭の貸し借りのことなど日常生活のことを何でも率直に自治会で話し合うことで利用者同士の相互の理解につながっている。

  • 第三者委員による利用者個別相談の仕組みが整備され、利用者が積極的に活用している。
     地域の有識者2名による第三者委員を設置し、利用者からの苦情や要望・希望を聞く仕組みを整備している。年に6回利用者の個別相談日を設けている。個別面談の希望者が多く予約制にするほどである。毎回2名の第三者相談員がそれぞれ8名程度の相談に応じている。相談の内容は利用者の対人関係のことや体調のこと、日中作業の事等多岐に及んでいる。相談の内容を「第三者委員相談表」に記録し苦情解決責任者(園長)に報告している。第三者委員の相談記録をもとに課題ごとの解決までのプロセスを支援会議で取り上げ職員間の情報共有を図っている。

  • 本人が理解できるように工夫した個別支援計画を作成している。
     アセスメントを実施し利用者への支援ニーズを把握し個別支援計画に反映している。アセスメントでは利用者の生活習慣、生活スキル、社会的スキル、コミュニケーション能力等の領域ごとに5段階の点数評価を行い、支援課題一覧表を作成している。長期・短期目標及び領域ごとの支援課題を明記し個別支援計画に反映し、3ケ月ごとにモニタリングを行い実践の成果を評価している。また、利用者向けに「個別支援計画書【本人用】」を作成し、長期・短期の目標、本人・家族の意向、及び支援課題を明記し、漢字には全てルビをふり利用者に分かりやすく説明している。利用者と職員が個別支援計画を共有できるように配慮している。

  • 毎年定期的に利用者の施設利用満足度調査を実施し課題の把握に努めている。
     満足度調査は、職員の言葉遣いや態度、医療や健康管理の事、日中作業、毎日楽しく過ごしているかなど生活の事等全部で27項目である。平成25年度のアンケート調査には利用者69名全員が回答している。質問項目ごとに5段階の数値評価を行い、結果を集計し職員に周知するとともに利用者や家族に公開し、また、自治会や保護者会で取り上げ施設運営やサービス改善に活かしている。

<改善を要する点:>

  • 生活支援マニュアルの整備がのぞまれる。
     食事支援や入浴支援、排泄支援等の生活支援に関するマニュアルの整備が望まれる。今後生活介護事業利用者の状況の変化や短期入所利用者の支援ニーズも考えられることから、マニュアルを整備しサービスの標準化を図ることが望まれる。

  • ボランティア受け入れの仕組みの整備が期待される。
     施設の年間行事の実施に際しては、地域のボランティアを活用し地域住民と連携し、利用者が地域を理解し、また、地域住民に福祉の在り方を理解してもらう取り組みが求められる。ボランティア受け入れの仕組みを整備し、地域連携の強化につなげる取り組みを期待する。

評価領域ごとの特記事項

人権の尊重

  • 人権配慮マニュアルに、年齢に配慮した対応や、人格を尊重し「さん」をつけて呼ぶこと、命令や叱責の厳禁、無視や拒否行為の厳禁を明記している。また、人権配慮マニュアルに制限・拘束の禁止を明記し、制限・拘束が単に精神的苦痛を利用者に与えるのみではなく、人間としての尊厳を侵す重大な人権侵害行為であることを職員に周知し注意を喚起している。

  • 朝、夕の打合せで、日々の出来事を報告し職員間の情報共有を図っている。その中で利用者の人権への配慮について職員に周知している。また、支援会議等で人権の配慮について取り上げ職員への自覚を促している。年1回、全職員対象に人権セルフチェックを行い、職員一人ひとりの人権意識の振り返りを行っている。新任職員研修では、必ず人権問題を取り上げ、職員の人権意識の周知徹底を図っている。

     
  • 職員は個人情報の慎重な取り扱いに留意している。個人情報の扱いに関しては、支援検討会議等の場にて職員へ注意を喚起している。「コンピュータ管理規程」「記録媒体管理・廃棄簿」を整備し、個人情報の適切な管理に努めている。個人情報の掲載等については利用目的を明示し、「個人情報掲載承諾書」に利用者・家族の同意を得るようにしている。

意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供

  • アセスメントシートに、基本的生活習慣、生活スキル、社会スキル等の評価項目があり、利用者状況に配慮した支援ニーズを明記している。アセスメント結果も踏まえ利用者個々の支援課題を検討し、個別支援計画に反映している。 個別支援計画書作成時、本人・家族の意向を確認し同意のサインをもらっている。また、年4回の保護者会の同日に、個別面談を行い、保護者の意向や要望を把握し個別支援計画書に反映している。

  • 個別支援計画に沿って、個々の課題ごとに3ケ月又は6ケ月ごとにモニタリングを行い、利用者の体調の変化や栄養管理の状況を評価し個別支援計画の見直しに反映している。また、随時担当職員が本人と面談し利用者ニーズを把握し支援記録に記述し、個別支援計画の見直しに反映している。

  • 利用者の状況に応じ就労継続支援B型から就労継続支援A型に、また、就労移行支援を目指した就労支援を実施している。本人の意欲や働きにより、成長する過程を実際に示すことで、利用者のエンパワメントに繋がっている。当初は就労継続支援B型の利用者として通所し、個別支援計画で本人の課題の解決を支援し、就労形態の移行を目指すことを目標にしている利用者がいる。

  • 日中作業のクリーニング業は、県内の病院や福祉施設の職員の白衣等1日に2000着以上の作業を行っている。また、ボールペンの組み立てや袋詰め等は一般の企業から委託加工の作業である。地域の関係機関と連携し、日中作業を推進している。また、就労に向けての職業マナーの習得や企業実習についても関係機関と連携し実施している。

サービスマネジメントシステムの確立

  • 「苦情解決事業実施要領」「苦情(希望や不満)の申し出について」を作成し、第三者委員の設置や役割について明記している。2名の第三者委員が年6回来所し、利用者が第三者委員に何でも相談できる雰囲気が醸成されている。年4回の家族会や家族来所時に相談体制について説明し、利用者や家族がいつでも第三者委員と面談し苦情や不満について話ができるように配慮している。

  • インシデント報告については、発生後朝夕の申し送り時などに全職員に報告し共有を図っている。再発防止に関して原因の究明、対策の検討、改善と迅速に行えるよう、体制を整えている。インシデント報告書は月ごとに集計し支援検討会議で分析し再発防止につなげている。利用者に関わることは個別に担当職員が利用者に説明し対応している。

  • 感染症マニュアルを各職員に配付し、インフルエンザやノロウィルス等の感染症の予防に向けての注意を喚起している。また、感染所に罹患した場合は、法人の若草病院と連携し嘱託の医師や看護師の助言のもとに個別に迅速な対応を図る仕組みを整備している。感染症発生に備え、足ふきマットに次亜塩素酸系薬品を染みこませる等の対策をしている。平成26年10月に金沢区の保健福祉センターによる体験型衛生管理講習会のスタンプ検査を受け、食堂カウンターや食堂ドアノブ、短期入所調理作業台等の細菌検査を受け職員に衛生管理の注意を喚起している。

  • 年度ごとに消防計画を作成し、火災予防対策や自衛消防隊、及び震災対策について明記している。年に6回災害発生を想定した避難訓練を実施し、そのうち2回は訓練の状況に関する消防署のアドバイスを得ている。防災訓練の記録を作成し、訓練の結果の反省事項を明記しつぎの訓練に生かしている。

地域との交流・連携

  • 近隣の小学校からの要請に応じ、園長が児童向けに障害者理解のための講演をしている。また、金沢若草園に同じ小学校の教員を招待して施設を見学してもらうとともに、プレゼンテーションソフトを活用しわかりやすく障害者理解が進むように研修会を実施している。

  • 地域の町内会の回覧板が回ってくる。町内の公園の清掃活動をしたり、地域の防災訓練に職員が参加したりしている。入所施設のころは地域の盆踊りや餅つきなどにも、利用者も参加していた経緯があり、今も町内会から参加の呼びかけがある。

  • ボランティアの募集は行っていない。ボランティアの協力を得る中で地域における福祉の理解を深める活動が期待される。

運営上の透明性の確保と継続性

  • 金沢若草園倫理綱領を定め、職員全員が倫理観を共有し、利用者の生活の場を確保し、利用者一人ひとりの自己実現と社会参加に貢献すること等を規範としている。また、「利用者に寄り添った支援を目指す」等の施設の基本理念を掲げ、職員に周知し人権の尊重に基づく利用者主体の施設運営に努めている。

  • 毎年利用者の施設利用満足度調査を実施している。調査は、職員の言葉遣いや態 度、医療や健康管理の事、日中作業、毎日楽しく過ごしているかなど生活の事等全 部で27項目である。質問項目ごとに5段階の数値評価を行い、結果を集計し職員 に周知するとともに利用者や家族に公開し、また、自治会や保護者会で取り上げ施 設運営やサービス改善に活かしている。

  • 職員の業務分担ごとの部会や作業委員会及び自治会委員会で日々の業務を検証し、支援会議や運営委員会に報告してサービスの改善につなげている。作業内容が利用者に合っているか、利用者がやりたいと希望している作業が実際にできているか等に配慮し、利用者一人ひとりの個別性を考慮したサービスの提供を目指している。

職員の資質向上の促進

  • 法令遵守関連の内部研修を積極的に開催している。園長が講師を務め、コンプライアンス研修や個人情報保護等に関する研修を実施している。また、横浜市社会福祉協議会や日本知的障害者福祉協会主催等の外部研修を活用して、ケースワーク技法や面接技術等の研修をしている。また、支援会議や朝夕の引き継ぎ時間に、利用者の状況変化や課題、障害特性への対応を話し合い、援助姿勢や観点、技法等を習得する機会にしている。 

  • 外部研修は資料を添付した復命書を支援課のファイルキャビネットに保管して、いつでも閲覧が出来るようになっている。また、支援会議で研修の報告をして、参加した研修の報告内容を全職員で共有している。 

  • 実習生は 「大学及び福祉専門学校等現場実習受け入れに関する取扱い要領」により、受け入れている。今年度は2校から保育士養成の実習生を受け入れている。

評価結果詳細

評価結果詳細PDFデータ


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